2020.12.5
【ケアリフォーム実例】日々を彩る家―インタビュー
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【N様プロフィール】
・40代ご夫婦
・女の子(小学校低学年,ベインブリッジ・ロパース症候群*1)
*1多動を伴う発達障がい/全国で4人という非常に少ない症例
【インタビュアー】
戸田:戸田桂一郎(社長)
伊奈:戸田工務店 ケアリフォーム担当/伊奈和樹
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―リフォームをしようと思ったきっかけはなんですか―
N様:同居している夫のお母さんの介護が必要になり、
お義母さんと娘の二人を同時にケアしないといけない
とても大変な時期があり、毎日の生活にすごく疲れていました。
娘は扉をたたいて音を立てたり、
手に取るものを投げて壊してしまったり、
扉を開けて出て行ってしまったりするので、
家の中でも怪我や事故の不安が常にありました。
普段は離れで生活しているのですが、
お風呂は母屋にしかなかったので動線としての住みにくさもあり、
また、壊れた扉をとりあえず直さないといけないけないということもあり、
マイナスをゼロに直すという発想で、リフォームをしようと考えていました。
―TODAを選んでくださった経緯―
N様:通常と違うリフォームではあると思うので
どこに相談すれば良いか分からず困っていました。
そんな時に、たまたま戸田工務店のホームページで
「ケアリフォーム」の記事を見つけ、
戸田工務店について調べたのがきっかけです。
ホームページのあの言葉(TODAの仕事>ケアリフォーム)に、
私たちの想いが全て入っていました。
ただ生活の不具合を解消するだけでなく、
私たち(親や介護者)は私たちで生活をしていかなくてはいけない。
ハンディキャップはその人がもつ「個性」だと捉え、
その個性を尊重しながら、「やる気」を引きだし、
「できること」の幅を広げていく。
と、同時に「介護・助を行う家族」のこともポジティブに捉えてくれている。
私の中で、もう「ここがいい!」とビビッときてしまって(笑)
それですぐ電話をして、駆けつけてきてくれたのが加藤さんと伊奈さんでした。
とても話しやすく、親身になって聞いてくれました。
本当はすぐにでもリフォームしたいという気持ちがあったんですが、
「ちゃんと考えてやっていかないと、無駄なリフォームを繰り返してしまうことになる。」
とブレーキをかけてくれて、一生懸命考えてアイデアを出してくれました。
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【リフォーム内容の紹介】
*築約40年の大工さんの家の内装リフォーム
介護や介助が必要な方とその家族が
安心・安全で心地よく生活できることを
最大のテーマとしてリフォームを行いました。
不都合がある部分を、ただ機能的に補うだけではなく
ちょっとした遊び心やお洒落さを。
N様の豊かな暮らしを願い、機能一辺倒ではない
TODAらしい提案を詰め込みました!
◇二間続きだった食堂と居間(和室)を一間につなげ、
熱が伝わりにくく足ざわりの良い無垢床の明るいLDKに
■Before■
■After■
◇テレビは壁付けにし、前面に強化ガラスをはめ込み、
お子さんが触れないように
◇お子さんのちょっとした遊びを誘う肋木(ろくぼく)の設置
◇寒くて暗かった洗面を、広く明るく使い勝手よく変更
■Before■
■After■
◇湿式(タイル造り)だったお風呂を
ユニットバスにして温かさとお手入れのしやすさを
■Before■
■After■
◇湿式だったトイレも床をはり、明るく掃除もしやすく、
扉も引き戸にしました
■Before■
■After■
◇小屋裏の物置として使われていた部屋をお子さんの遊び場に
◇開けて飛び出してしまったり、
扉をバタバタすることを防ぐために建具を交換・新設、鍵を設置
◇キッチンは危険が多いので、柵をつけてお子さんが入れないように
◇カウンターの板はN様がご自身で選んだものを大工さんが加工
◇カウンター下とキッチンの横の壁の珪藻土は
N様が左官屋さんと一緒に塗ったそう
◇階段下の空間をお子さんが落ち着く隠れ家に
奥の薄緑の壁はチョークで落書きができる
◇N様にとっての使い勝手を考慮した家具もつくりました
◇ガラス素材が多く割れて怪我をする心配があった和室の建具を、
枠は活かしたまま割れにくい素材に
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―実際工事をしてみてどうでしたか―
N様:とりあえず、安全面で気になっていたことは全部やってもらったので、
対策としてはばっちりだと思います。
娘は自分で遊びを見つけては、遊んでいます。
扉の鍵も活きていて、前は目が離せなかったのですが、
リフォーム後は鍵をかければ勝手に外には出られないので、
安心感があります。
伊奈:成長の段階で手の届く範囲が変わってくると思うので、
その都度変えていきましょう。
N様:成長にともなって行動も変わってくるかもしれないけど、
そればっかりは分からないからね。
戸田:ケアリフォームの基本的な考えの中に
「今、現在のことを大切にしよう」という考え方があります。
成長であったり、状態の変化によって
不自由になっていく範囲が広がっていく可能性もありますが、
その時その時に必要な事をやっていくのも大切だと考えています。
先を読むことももちろん大切ですが、
本人もその家族や周りの人も、
生活しながら負担が少なくなる方法を見出していくことが、
その時のベストではなくともベターでないかと思っています。
N様:計画の最初に、
「全く入れなくしてしまわない方が良い」と伊奈さんに言われて…。
「この子の成長もあるので完璧にしておかない方がいい、先のことを見て」
って言われて、あぁそうだった。
そうなんだ、伸びるかもしれないんだこの子は…と思い出したんです。
戸田:リフォームして空間に変化ができることで、できること、
喜んでくれることが本当にちょっとでも増えていけば嬉しいです。
伊奈:また成長の段階で、「ここが不便になってきた」
とご連絡いただければ、対応させていただきますね。
―工事中ストレスはなかったですか―
戸田:工事音や環境の変化、
知らない人が入れ替わり立ち代わりで来ることなどで
ストレスを感じられる子もいらっしゃると聞いていましたが、
N様のお子さんは大丈夫でしたか?
N様:特になかったです。
工事前は大丈夫かな?と気になっていたのですが、
この子にとって時期が良かったのか、特に不快な感じもなくて…。
どちらかというと嬉しかったみたいです。
大工さんが来てくれていた時は、この子すごく調子が良くて、
朝音がするとカーテン開けて
「今日も大工さん来てるね」「今日は誰?」
ってチェックするのが習慣になってて…
伊奈:それは、大工さんも喜ぶと思います。
音に敏感だと聞いていたので、
工事中の音とか大丈夫かな?と思っていたのですが…
N様:意外と大丈夫でした。
あと、実は一部珪藻土を自分で塗らしてもらったんです。
左官屋さんに丁寧に教えてもらいながらやったら、すごく楽しくて…
戸田:壁を塗ったりとか、できるところで携わっていただくと、
家に対して愛着も湧きやすいですから。
もしN様さえ良ければ、
お子さんにも壁塗り、参加していただいても面白かったかもしれないですね。
他のお子さんなんかも、コテを使わずに素手で塗ってもらうこともありますから。
N様:綺麗に塗れないかもしれないけど、この子ならできたかもしれませんね。
やれれば、良い思い出になってたと思うので、次は親子で挑戦したいと思います!(笑)
―これからのケアリフォームについて―
N様:建具屋さんには、ここに鍵をつけるのか…って、
どう思われちゃったかなって思いますが。。
伊奈:建具屋さんもちゃんと理解してくれています。
今後同じ建具屋さんが経験を積んでいけば、
ケアリフォームという話になれば
自然に「こういうところに鍵必要じゃない?」と
建具屋さんの方から提案してくれるようになると思うので、
こちらとしてもひとつひとつ経験を積ませていただいています。
それぞれ、抱えている困りごとは違うと思うので、
ひとつひとつ経験していき、提案していけるようになりたいです。
戸田:私の新築中の自宅にも、段差解消機や、
四肢麻痺がある方用のお風呂用のリフトを入れさせていただいています。
ケアリフォームに取り組むまで気づくこともなかった、
ケアが必要な方の本当に必要としていることを、
知識だけでなく実感できるように使ってみないといけないと思いまして。
建築屋はどうしても、
ケアが必要な方当人の不便を解消するという視点はあっても、
ケアをする介助する側の負担を軽くしたり、
生活を明るくするという視点は頭にないことが多いので。
私自身もスタッフも日々勉強させていただきます。
5月に自宅の完成見学会を予定しているので、
お知り合いでもケアリフォームが必要な方がいらっしゃれば、ぜひお知らせください。
戸田・伊奈:本日はありがとうございました!