渡辺道也と申します。
私は25歳になって大工の道を志しました。
これまで大学に通いながら建築史や建築計画を学んでいた私ですが、
知識や経験が増えるにつれて感じたことは、
「計画する」人たちの仕事を成立させている「建てる」人たちの存在と
その技術の重要性でした。
大学時代には旅や町歩きをすることが好きで、
日本各地で素晴らしい建築をいくつも体験してきましたが、
その背後には必ず腕の立つ職人がいたことに気が付いたのです。
いつしか私の目標は建築家になることから、大工になることへと変化し、
大学卒業を機に戸田工務店で大工となりました。
しかし年齢的に若いわけでもなく、「建てる」ことに対して素人である私が、
大学卒業後に大工を目指すことは決して簡単なことではなく、むしろ大きな挑戦です。
実際に大工になってからは肉体的にも精神的にも厳しい世界であることを痛感していますし、毎日が挫折の連続です。
しかしそれと同時に、この環境のなかを耐え忍びながら、技術を磨いてきた職人たちによって日本の建設業が支えられてきたのだと実感しています。
近頃よく思い出すようになった大学の恩師の口癖があります。
「建築は共感から始まる。」
どんなに見栄えの良い建築であっても、そこに共感が生まれなければただの自己満足で終わってしまう。それは人間も技術も同じなのだと常々感じています。
素晴らしい建築をこの世に残してきた先人たちに少しでも近付くことできるように、
共感が生まれる知識と技術、そして人格を備えた大工となることを目指し、
日々精進してまいります。